ラップの客演は「勝負」ではなく「クライアントワーク」
突然ですが、たまにツイッターなどで「客演は勝負」、「他のラッパーを食ってナンボ」といった意見を目にすることがあります。
これは正解の場合もあります。例えば、ラッパーが何人も参加するマイクリレー曲であれば、埋もれていては何の意味もないし、聴く側も「誰がヤバいバースを蹴るかな」とワクワクしながら聴くので、どう考えてもスキル勝負です。
でも、それは客演の一部に過ぎません。誰かに客演を依頼する理由はたくさんあります。試しに、思いつくものをいくつか書き出してみます。
- あるメッセージを伝えたい曲だとして、そのメッセージを自分とは違うボキャブラリーで(違う層に伝わる言葉で)歌える人を客演に呼ぶことで、もっと多様な人にメッセージが伝わる曲にしたい
- 自分の苦手な部分(メロディ、高速ラップなど)を得意な人に補ってほしい
- その人の声やフロウが曲のビートに合いそうだから、このビートで歌ってみてほしい
- 友だちやファンなので、一緒に曲を作りたい
- 良い曲だと思っていて、少しでも多くの人に聴いてほしいので、人気のあるアーティストを客演に呼んで力を借りたい
ちょっと考えただけでも、どんどん出てきます。このように違う役割を期待して客演を頼まれたのに、「客演は勝負」と目立つことばかり考えていたら、期待に沿った客演を蹴ることができません。
そのため、僕は客演は「クライアントワーク」として取り組むことを意識しています。この客演における自分の役割は何かを考えて、その期待に応えるということです。
ACE COOL - Tokyo Sence (feat. MATO, Moment Joon, RAq, Jinmenusagi)
例えば、こちらの曲はわかりやすいマイクリレーなので、超スキルフルな面子に負けないように、がんばって勢いのあるスキルフルなバースを蹴るようにしています。
SHIMPEI - 220 (feat. RAq)
SHIMPEIさんの「ONE」では、曲に展開をつけるような「味付け」や「飛び道具」の役割があるかなと考えて、ビートに合わせて落ち着いた感じにしつつも、少し変則的なフロウでバースを蹴っています。
QUMO - Sustainable (feat. RAq)
QUMOさんの「Sustainable」に呼んでいただいたときには、まだ他の参加者の方があまり触れていなさそうな部分を補うことも意識して書きました。
例えば、サステナブルな社会を目指す「ESG」の考え方には、環境問題などの話に加えて、持続的な成長を目指すための「従業員の健康および安全」など、人に関する項目も含まれています。*
そこで、「ブラック労働」や「やりがい搾取」で一時的に利益を捻り出している企業や組織もサステナブルじゃないよねということについても触れています。
許容を超える負担がベースじゃ崩れ落ちる いくつもの組織にいくつものシステム 大なり小なり また繰り返して 潰れた人間が生み出される everyday 覆い隠す 美辞麗句 自己啓発で麻痺した奴を仕入れて回ってるビジネス この都会では たまに心の折れる音が聞こえるから 耳にあてたヘッドフォンのボリュームあげた
ということで、客演ワークについても、客演を蹴ったときには告知するので、ぜひ楽しんで聴いていただけると嬉しいです!
告知コーナー
先週の水曜日に「Complicated」をリリースしました。
今回から「Sped Up」版と「Slowed + Reverb」版もつけていて、それについては先週のニュースレターで書いたので、まだお読みいただいていない方は、ぜひ読んでみていただけると嬉しいです。
質問・リクエスト回答コーナー
先週はありませんでしたが、今週はまた質問・リクエストをいただきました!みなさまのおかげでコーナーが成り立っています。ありがとうございます。
Q. 曲のテーマはどんな時に思い浮かぶ?
定期的に楽曲をアップされてますが、曲のテーマはどんな時に思い浮かびますか?月1度のペースで音楽配信をしていますが、それでもリリックや楽曲のテーマがなかなか思い浮かばず、つまづいています( ; ; )隔週ペースでの配信、本当に尊敬します!
ご質問やお褒めの言葉ありがとうございます。これはとても難しい問題ですよね!曲をたくさん作るほど、テーマは当然枯れていくからです!笑