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written by @raq_reezy
📝 コラム:シングルで配信すべきか、EPやアルバムで配信すべきか
今回は、興味深いご質問をいただいたので、そちらに答えていきたいと思う。
(例によって、今年からはコラムの文章を丁寧語ではなく口語で書いていて、質問への回答を口語で書くと、なおさら偉そうな感じに見えてしまうけど、そこは許してほしい)
いつも有益な情報をありがとうございます。ニュースレターを毎回楽しみにしております。 質問をさせていただきたいのですが、楽曲を配信する際にシングルでリリースするのと、EPやアルバムのようにまとめてリリースするのではどのようなメリット・デメリットがありますでしょうか? 0から楽曲を配信しようとしている段階でしたらどちらがいいのかなと考えておりまして、そのあたりの知見を伺えましたら嬉しいです。 もしよければよろしくお願いいたします。
まとめると、以下のようなご質問だ。
- シングルで配信すべきか、EPやアルバムで配信すべきか
- 0から楽曲を配信しようとしている段階である
僕はレーベルの人間とかではないので、あくまでも個人アーティストの勝手な意見であり、本当はレーベル関係者などの方が正確な回答ができると思うけど、僕の分かる範囲で答えてみたいと思う。
シングル配信のメリット
シングルで配信すべきか、アルバムで配信すべきかというのは、質問者様も前提を書いてくれている通り、当然ながら前提とする状況によって変わってくる。
そして、答えから言ってしまうと、本当に活動初期の段階であれば、シングルから配信する方が良いのではないかと思っている。
シングル配信のメリットは大きく3点ある。
- アルバムよりも、死に曲が出にくい
- 制作のペースを維持しやすい
- 反応を見ながらの試行錯誤がしやすい
それぞれ解説していきたい。
シングルのメリット(1):アルバムよりも、死に曲が出にくい
まず、活動初期の段階で自分の曲を知ってもらう方法としては、既存のファンやリスナーがいないため、新規のリスナーに見つけてもらうしかない。その時、一番大事になるのがストリーミングサービスのプレイリストだろう。
特にSpotifyは、まだまだ駆け出しのアーティストから巨大なプレイリストまで、様々なアーティスト向けのプレイリストを取り揃えていて、適切なサイズとジャンルのプレイリストに新曲を入れてくれるので、自分にあったリスナーに聴いてもらいやすい。
そこで新曲をプレイリストに入れてもらおうと思うと、新曲のリリース登録をするときに「サブミット」といって「プレイリストのエディターの方にはこの曲をチェックしてほしい」というプレゼンをするんだけど、Spotifyのサブミットには一回のリリースにつき一曲というルールがある。
つまり、シングルであろうと、アルバムであろうと、一回のリリースであれば一曲しかプレイリストには入らないということ。であれば、10曲入りのアルバムを作ると、1曲はプレイリストに入って見つけてもらえるけれど、残りの9曲は誰にも見つからない曲(死に曲)になってしまう。
一方で、これをアルバムではなく、すべてシングルでリリースしていくと、運が良ければ、毎回プレイリストに入るので、全体として多くの人に聴いてもらうことができる。
さらに良い方法としては、例えば5曲であれば、まずは最初の4曲をシングルとしてリリースする。そして、最後の1曲だけ、前の4曲とあわせて5曲入りのEPとしてリリースして、その最後の1曲をサブミットする。これがゼロからリリースしていくときに、最大限に自分の曲を聴いてもらう方法だと思う。
いずれにせよ、シングルにしてリリースを分けることで、多くの曲をサブミットして、プレイリストに入れることができる。これがシングル配信のひとつめのメリットだ。
シングルのメリット(2):制作のペースを維持しやすい
次に、重要なメリットとして、シングル配信は制作のペースを維持しやすいというのがある。
例えば、10曲入りのアルバムを作ろうと思って、作り始めたとする。
最初は「月に2曲のペースで作って、半年ほどで完成させよう」と計画していたけれど、気付くと、忙しさに追われて1曲も出来ない月があったり、どんな曲を作るべきか悩んでスランプに陥ってしまい、2年が経っても、何も完成しない。
こんな状況は結構容易に想像できる。こんな感じで、リスナーに忘れられてしまったり、制作に挫折したりして、フェードアウトしていくアーティストも多々いると思う。それであれば、まずは1曲リリースして、次を作り、またリリースするというふうにした方が、安定して曲を出していきやすい。
アルバム作りは、とにかく考えることが多くて、挫折しやすい。シングル作りよりもだいぶハードルや難易度が高い。だからこそ、アルバムに価値があるのだけれど、活動初期であれば、まずはシングル配信でペースを作るのが良いのではないかと思う。(配信自体はこれから始めていくが、アーティスト歴は長いという場合は、話は変わってくる)
シングルのメリット(3):反応を見ながらの試行錯誤がしやすい
シングル配信の3つ目のメリットとして、反応を見ながらの試行錯誤がしやすいというのがある。
「なるほど、この曲はこういうプレイリストに入って、このくらい聴かれるのか」とか、「この曲はリスナーが繰り返し何度もリピートして聴いてくれているな(再生回数÷リスナー数を計算すると、同じリスナーが繰り返し聴いてくれているかが分かる)」など、曲を出すと、当然ながらフィードバックがある。
そうしたフィードバックをもとに、今度はこんな曲を作ってみようとか、試行錯誤をすることができる。アルバムだと、このフィードバックがない状態で、いきなり10曲とかを作っていくことになるので、なかなか制作の手がかりも得にくい。
以上がシングル配信のメリットであり、活動初期ほど、これらのメリットは大きいと思う。
アルバム配信のメリット
一方で、シングル配信のメリットは活動が長くなってくると、やや薄れてくる面もある。
例えば、既存のファンやリスナーが増えてくれば、プレイリストに全曲を入れて新規のリスナーにアプローチする必要は薄れてくる。ベテランになってくれば、アルバム制作で挫折することも減ってくるだろう。また、どんなファンやリスナーがいて、どんな曲を好んでくれるかが分かっていれば、都度の試行錯誤もそこまで必要ない。
そこで、アルバム配信のメリットを考えてみると、やはりファンが喜んでくれやすいというのがあげられる。アルバムを作るとなると、それなりにテーマがあったり、一連の流れを考えたりと、作品としての付加価値が高いし、アーティストの内面も出やすいので、深い楽しみ方ができる。要は作品にハマりやすい。
それから、グッズを売るとか、ワンマンライブをするとか、そういったふうにアーティストとしての活動範囲を広げていこうと思うと、やはりその核となる世界観を構成するアルバムが必要になってくると思う。
要は、アーティストとして名前を売っていく段階では、シングル配信が名刺を配るようなもので適切だが、アーティストとして自分の世界を作っていく上では作品としてのアルバムが欠かせないということになるだろう。
ということで、それぞれの活動の状況や目標によって、シングル配信をするべきか、アルバム配信をするべきかは変わってくると思うので、メリット・デメリットを検討してみていただけると良いかと!
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とりとめもないことを書いていく、チラ裏派出所コーナーですが、今日は何故か経済のことでも書こうと思います。
と、その前に上の告知コーナーでも書きましたが、ちょっと最近バタバタとしており、3月は新曲をお休みさせていただき、4月からまた配信を再開したいと思います。バタバタしている状態が続いていた場合、もしかすると4月からは月1曲にするかもしれませんが、とりあえず4月を楽しみにしていただけますと幸いです。
さて最近、今後数年の日本はとても明るいんじゃないかと思っています。というのも、1980年代は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代なんだけど、その時の状況に非常に似てきたから。